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1.なぜ経営計画書が必要なのか

2.「社員向け経営計画書」策定実行プログラム4つの特長

3.経営計画書と定着化活動の内容

4.そもそもやる気とは

5.従業員がやる気になる2つのライン

6.大きな会社と小さな会社の違いを知る

7.強い縦のラインの作り方

 

従業員がやる気になる2つのライン

<小さな会社は縦のラインが最重要>

少し学術的になりますが、アメリカの経営学者で電話会社の社長でもあったバーナードは、組織を「2人以上の人々の意識的に調整された活動または諸力のシステム」と定義し、組織を成立させるための条件として「共通目的」、「恊働意欲」、「コミュニケーション」の3つの要素を提唱しました。具体的には、①人々が協力して意識的に調整された活動を行うためには共通の目的が存在しなければならないこと、②その共通目的を達成しようとする意欲を持つこと、③個々人の共通目的と恊働意欲を結びつけ組織として目的を達成するために、各種の情報伝達が必要なこと、を主張しています。これが1つ目の「縦のライン」で、最も重要なラインとなります。
実際の会社の従業員で考えて見ましょう。仕事に楽しみややりがいが見いだせない社員は、何のためにこの仕事を行っているかというミッションを理解していません。例えば、「おいしいお弁当を届けることで家庭を幸せにする」という経営理念をもつ宅配弁当製造工場があるとします。この工場で働くAさんは、長年卵焼きをカットするだけの工程に勤務しています。経営理念を理解していないAさんは、「くる日もくる日も卵焼きのカットだけで飽き飽きする」、「一生こんなことはしていられない」、「こんなことをずっとやらせるとはひどい会社だ」と考えます。逆に経営理念を理解しているAさんであれば、「こういう風にカットする方が、見た目が綺麗で食べる人が楽しい気分になるのではないだろうか」、「卵焼きにもう少し調味料を加えた方がおいしくなるのではないか」、「カット技術は習得できたので、次は盛りつけ担当に立候補してみたい」と考えます。いかがでしょうか?「おいしいお弁当を届けることで家庭を幸せにする」という目的を、従業員が共有しているかいないかでこのように考え方が変わってきます。
次にコミュニケーションはどうでしょう。従業員に「おいしいお弁当を届けることで家庭を幸せにする」という経営理念を理解させていない会社では、経営者や現場責任者、従業員との間で建設的な会話が交わされることは少ないはずです。あったとしても、上司が部下の仕事のミスを責めたり、部下同士が会社や上司の悪口を言い合ったりすることぐらいでしょう。一方、従業員に「おいしいお弁当を届けることで家庭を幸せにする」という経営理念を理解させている会社では、建設的な会話が多く交わされているはずです。そうでなければ、経営理念を浸透させることはできません。「家庭を幸せにするために無駄な仕事は何一つない」、「家庭を幸せにして日本一になろう」、「家庭を幸せにするために良い提案をしてほしい」などです。そして、従業員は経営者を尊敬し会社を愛するようになります。従業員同士でも、仕事の改善方法等前向きな会話が増えることでしょう。
共通目的を醸成しコミュニケーションを図れば、従業員のやる気は自然に高まります。質はかなり異なりますが、大企業ではこの共通目的とコミュニケーションが機能しています。しかし、従業員のやる気が低い小さな会社ではほとんど機能していません。このように、小さな会社では縦のラインが最も重要なのです。

しかし、一方で、この縦のラインを作り上げるのはそう簡単ではありません。経営者の熱意や強力なリーダーシップがあってこそ初めて実現できるものです。しかもこの活動は会社が存続する限り永久的に続けていかなければなりません。みなさんも、職場で「今日から会う人全員に挨拶しましょう」や「出社時や帰社時にはもっと大きな声で挨拶しましょう」等と、上司から言われた経験をお持ちだと思います。そうすると、しばらくはそのようになります。ところが、1ヶ月、2ヶ月と立つ間にだんだんと声も小さくなり、また元に戻ってしまいますよね。毎日誰かが言い続けるか、“挨拶しない場合は罰金をとる”などの仕組みを導入しない限り長続きしないのです。それが人間というものですよね。それと同じで、この縦のラインも継続した取り組みや仕組みづくりが必要不可欠なのです。

<横のラインでさらにやる気がアップする>

従業員のやる気(モチベーション)を高めようとする時に、一般的に良く検討される事項です。
アメリカの心理学者マズローは、人間に欲求を以下のように5段階に体系化しました。

第1段階 生理的欲求 生命維持のような欲求で、
主に衣食住にかかわるようなもの
会社では、主に賃金や
待遇での欲求
第2段階 安全欲求 安全や安定を求めて、危険や
恐怖を避けようとする欲求
会社では、主に雇用環境
や職場環境への欲求
第3段階 社会的欲求 社会で人々に認めてもらいたいと
いったような欲求で、集団への帰属心
や友情のような感情
会社では、主に人間関係に
関する欲求
第4段階 自己欲求 人から認められ尊敬され
たい様な欲求、自尊心など
会社では、主に昇進・
昇格などに対する欲求
第5段階 自己実現欲求 自分の能力の限界や可能性に挑戦し、
自身の充実感や満足感を高めたい
というような欲求
会社では、主に革新的業務や
課題克服、能力開発などに対
する欲求

また同じくアメリカの心理学者であるハーズバーグは、仕事のやる気(モチベーション)に影響を与える要因を2つに区別しました。1つは、職務に対する不満足を防止する「衛生要因」、もう1つは、積極的な職務態度を形成する「動機付け要因」です。

衛星要因 職務の不満足を防止
するもの
会社では、経営方針、経営者や上司との関係、
労働条件、報酬、職場の人間関係、身分、保障、などが該当します。
動機付け要因 積極的な職務態度
を形成するもの
会社では、達成感が得られる仕事、会社や取引先
から認められる存在、権限や責任のある立場、昇進・昇格、自己成長による充実感、などが該当します。

これらより、一般的に従業員のやる気(モチベーション)を高める方法として、2つの施策が提唱されています。

1つ目は、従業員に対する教育・訓練の導入です。具体的には、上司や先輩が部下や後輩に対し実際の現場で共に仕事を行いながら教育・訓練を行う方法です。マンツーマンの技術指導やセールスマンへの同行訪問等のいわゆるOJTといわれるもので、最も効果が高い方法です。その他、新入社員研修や営業研修、技術研修等、学校の教室形式で教育・訓練を行う方法をOff−JTと呼びます。そして、通信教育を受けたり外部の資格試験に挑戦するために自主学習を行ったりすることは自己啓発といわれます。いずれにしても、現在の仕事や将来的に必要となる仕事上のスキルを習得することが目的です。
教育・訓練を受けて自分自身の仕事に対するスキルが高まれば、仕事に対する意欲も高くなります。特に、お客様と対面で接するサービス業等においては、接客の質が向上しお客様の満足度も高くなります。教育・訓練も非常に重要です。

2つ目は、従業員のやる気を高めるための直接的な施策の導入です。これには多種多様名ものがあります。以下に代表的なものを示します。
1. 人事評価制度
2. 報酬制度
3. 表彰制度
4. 休暇制度
5. 昇進昇格制度
6. 人事異動
7. ジョブローテーション
8. 権限や責任の委譲
9. 社内提案制度
10.目標チャレンジ面接制度
しかし、これらの施策導入には評価の正当性や評価基準の透明性がしばしば問題となります。従って、評価基準や表彰基準を予め明確に示しておくこと、従業員全員が公平に評価や表彰の機会が与えられること、そして、従業員全員が公正に評価されることが必要であり、従業員の数が多くなるほど運用が難しくなります。

ただし、横のラインの導入は縦のラインが機能していなければ効果は得られません。共通目的がなくコミュニケーションも不十分な会社にこのような制度だけを導入してみても、よけいに従業員の反感を買うだけです。よく「社員が増えてきたので人事制度を導入したい」という相談を受けますが、そのほとんどの会社では縦のラインが機能していません。まず、縦のラインをつくることが先決です。縦のラインが機能していれば自然と横のラインが出来上がっていくものです。具体的には、経営計画書の「人財育成」中に横のラインを明示すれば良いのです。

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